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2019.07.08

Satoyama推進シンポジウム2019 基調講演「昔ながらのやり方で未来の社会を活性化」(本コンソーシアムアドバイザー 藻谷浩介氏)

Satoyama推進シンポジウム2019 基調講演「昔ながらのやり方で未来の社会を活性化」(本コンソーシアムアドバイザー 藻谷浩介氏)

英字新聞であるThe Japan Timesが、日本から世界に発信していく「Satoyama」。
2018年1月よりThe Japan Timesにて連載を開始しております。(隔週の月曜日掲載)
コラム名は「satoyama consortium in focus」。
記事はThe Japan Times Onlineにもアーカイブされ、全世界に日本の里山での活動を発信しております。

URL:https://www.japantimes.co.jp/consortium/satoyama/

※今回は、2019年6月24日付のThe Japan Timesに掲載した記事の和訳を紹介いたします。

タイトル:昔ながらのやり方で未来の社会を活性化

里山とは、既存の天然資源の持続的利用を目的として、住民たちに守られている地方の村近隣の山や森林を指す。これは日本中で何百年も続けられてきことで、共生と循環再生に基づく経済である「里山資本主義」の背景にある概念でもある。

東京で6月4日に開催された Japan Times Satoyama 推進コンソーシアムのシンポジウムにおいて、2013年に出版された書籍『里山資本主義』の共著者である藻谷浩介氏が、里山資本主義と現代社会に広がるマネー資本主義の違いについて、講演を行った。

日本総合研究所の主席研究員を務める藻谷氏は、里山資本主義が日本だけではなく、世界全体にとって、より持続可能である理由も語った。

マネー資本主義は極端な繁栄と衰退というパターンを、最終的にこのパターンが崩壊するまで幾度となく繰り返し、循環再生はないがしろにされ、喪失に至ると、藻谷氏は指摘した。

「現代の経済学はある種の宗教のようなものです。死ぬまで他者と競い合い、自分の目前にある金銭的利益のみを重視してもよいのだと、人々に信じ込ませます」と、藻谷氏は述べた。さらに、一神教の信者が唯一の神を信仰するのと同じだと、付け加えた。

藻谷氏によると、里山資本主義は、人生における「幸福」を達成する唯一の方法を信じ込むのではなく、充実した人生を生きる無数の方法を提供しているという。

「やおよろずの神々を信仰する神道の観念に似ています。単一的な富のあり方を追求するのではなく、多様な人々や価値観を受入れつつ、自分を幸せにする方法はごまんとあります」と、藻谷氏は説明した。

さらに藻谷氏は、「現代社会では誰ひとりとして資本主義と無関係ではいられません。誰もがお金を稼ぎ、使っています」と述べ、「しかし、地方のコミュニティーの多くでは、お金に頼る部分とお金以外のものに頼る部分のバランスがよいのです」と続けた。

そして、金持ちが社会的勝者だという考えは非常に浅はかだという、藻谷氏自身の信念を強調した。

「自分の精神的安定のために、誰か見下せる相手が必要だとしたら、あなたは死人も同然です。人生はレースではありません。人生とは(自分にとって)かけがえのない物事に満足し、お互いをかけがえのない存在として受け入れることなのです」と、藻谷氏は説いた。

では社会において最も価値ある人間とはどういう人間なのか。「なんらかの形でバトンをつなげる者」が、藻谷氏の答えだった。

土地、風景、事業または家族であれ何であれ、前世代から受け継いだものを次世代へ継承する行為に価値を見出すことこそが、里山資本主義の核心だと、藻谷氏は考えている。

「いつも言っていますが、名前残すな、事柄残せ、ということなんです」と、藻谷氏は話した。

世界の多くの国々が抱える共通課題の一つとして、社会の高齢化を背景に、さまざまな資産、資源や伝統の次世代への継承が難しくなっていることが挙げられる。

「高齢化は、中国や米国を含め、多くの国々が共有する問題ですが、国連が提唱する国際目標『持続可能な開発目標(SDGs)』では、増え続ける高齢者たちが、どのようにしたら充実した人生を送れるのかについて言及していません」と、藻谷氏は述べた。

日本では人口減少に伴い、循環再生が崩壊しつつあり、個人消費も停滞している。

「日本の国際競争力は堅調に向上し続け、過去30年の間に、貿易黒字もほぼ倍増しましたが、お金は循環しておらず、景気も良くありません」と、藻谷氏は語った。

さらに、日本の主要都市では、特に東京を筆頭に、人の流動も滞っていると指摘した。

「東京都とそれに隣接する千葉、埼玉と神奈川の3県では、過去4年9ヵ月に渡り、15~64歳の人口が減少し続けているのです」と、藻谷氏は述べた。

「労働人口不足を補い、生産性と国際競争力を上げるため、製造・生産の現場ではロボットの導入が広範囲で進んでいますが、ロボットは飲みにいけませんよね」と、藻谷氏は笑った。コミュニティーに活力を注ぎ込むのは、お金やロボットではなく、人間なのだ。

里山資本主義の概念は、人々が実際に充実感を得られるやり方で、経済を活性化するためのヒントに成り得るかもしれない。多様な価値観を次世代へ伝えるために、一人一人が循環再生を基盤とした、既存資源の活用の一翼を担うことが、里山資本主義のあり方だ。

原文はこちら(英文)
https://www.japantimes.co.jp/satoyama-consortium/2019/06/23/satoyama-consortium/past-methods-can-revitalize-future-society/

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