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2020.01.06

「森林、農場にみる多様で、潜在的なチャンス」Japan Times Satoyama推進コンソーシアム スタディツアー2019(鳥取県・岡山県)

「森林、農場にみる多様で、潜在的なチャンス」Japan Times Satoyama推進コンソーシアム スタディツアー2019(鳥取県・岡山県)

英字新聞であるThe Japan Timesが、日本から世界に発信していく「Satoyama」。
2018年1月よりThe Japan Timesにて連載を開始しております。(隔週の月曜日掲載)
コラム名は「satoyama consortium in focus」。
記事はThe Japan Times Onlineにもアーカイブされ、全世界に日本の里山での活動を発信しております。

URL:https://www.japantimes.co.jp/consortium/satoyama/

※今回は、2019年12月16日付のThe Japan Timesに掲載した記事の和訳を紹介いたします。

タイトル:森林、農場にみる多様で、潜在的なチャンス

Japan Times Satoyama 推進コンソーシアムは、鳥取県と岡山県で行われている自然資源を生かしたさまざまなプロジェクトと事業を視察するため、現地で2日間のスタディツアーを11月に主催した。

本コンソーシアムの目的は、関係者が実践している里山や里海を有効に活用するための活動の支援にある。里山・里海とは、近隣住民によって大切に維持・管理されている森林や沿岸地域を指す言葉である。

スタディツアーは鳥取県東部の八頭町で、隼Lab.(ハヤブサラボ)という飲食店、ショップ、ワークショップやセミナーに使用できるレンタルスペース、コワーキング空間、そしてオフィスから成る複合施設を訪問した。これらの施設は、かつて地元の小学校として使われていた建物の中に設けられている。人口わずか17,000人のこの町において、隼Lab. には年間約42,000人の来場者が訪れる。

生徒数の減少により、この小学校は5年前に近隣校と統合された。八頭町役場の企画課長・川西美恵子氏によると、町の予算を使って小学校の改築を行ったが、2017年の同施設開業以来、隼Lab. の運営全般は民間企業のシーセブンハヤブサが担っており、町からの財政支援は一切ないという。

シーセブンハヤブサの代表取締役社長を務める古田琢也氏は、東京でグラフィックデザイナーとして働いた後、7年前に故郷の八頭町へ戻ってきた。古田氏は、隼Lab. を開業する前に、この地域でカフェ1店とゲストハウス1軒を開業している。隼Lab. は、コワーキングスペースやオフィス、また充実したスタートアップ・プログラムの提供を通じて、古田氏のような若手起業家の育成や支援を行っている。

スタディツアーの参加者は、Ooe Valley Stay (オオエバレーステイ) という、閉校した小学校を宿泊施設としてよみがえらせたホテルに宿泊した。建物正面に掲げられた大時計と本館に隣接する体育館は、訪れる人々にかつてこの建物が大勢の生徒たちであふれかえっていたことを思い起こさせる。しかし1階にはおしゃれな郷土料理レストランがあり、建物はモダンで洗練されたホテルになっている。

このホテルを運営するのは、養鶏で成功を収めた地元企業の大江ノ郷自然牧場だ。ヘルシーでおいしい卵を育てて販売するという信念のもと、代表の小原利一郎氏は家族が行ってきた養鶏場の飼育方法を改革し、通信販売によって消費者に直接販売する、自然飼育の平飼い養鶏場として1994年に再スタートを切った。

現在、大江ノ郷自然牧場はレストランと食品・スイーツ製造工場を経営しながら、牧場での農業体験の提供、ホテルの運営も行っている。

「全ては、私たちのニワトリの飼育環境を皆さんに見てもらいたい、という私の単純な願いから始まりました」と、小原氏は述べた。

さらにスタディツアー参加者は、八頭町の南にある智頭町の野外保育施設・森のようちえん まるたんぼうを訪れた。この幼稚園は園舎や教室の代わりに、14カ所のフィールドを使用している。

「山、河原に道。町全体が私たちの教室です」と、同園を運営する NPO 法人の理事長を務める西村早栄子氏は話した。

20代の頃、ミャンマーでマングローブ林の研究に従事していた西村氏は、日本人は子供に対して過保護になりがちだと感じたという。西村氏の夫が鳥取県出身だったこともあり、より自然が豊かで、伝統的な環境の中で子育てをしようと、智頭町に移住した。

「ここでの生活は不便なこともありますが、子供の成長においては、その不便さが重要な要素です。子供たちは自分たちの手と頭を使う以外に選択肢がないからです」と、西村氏は語った。

西村氏は自身の経験と満足感を共有しようと考え、幼稚園開園のための NPO 法人を立ち上げた。その後、別のプレスクールコミュニティと子供たちの自主性を尊重した教育を目指す新田サドベリースクール、そしてシェアハウスを開業した。

この森のようちえんに子供を通わせている親の1人が、木工房ようびの建築設計室室長で建築士の大島奈緒子氏だ。大島氏の娘の日常生活は母親と同じように、森と結び付き、そして森に囲まれている。家具の制作と建築設計を行うようびは、2009年に岡山県北東部の西粟倉村に設立された。

工房の開業以来、ようびの木工職人と建築士は地元の資源(主にヒノキ)を使い、自社商品を製作し続けている。森林を理想的な環境に保ち、樹齢の若い木が健康的に成長するためには、戦後の高度経済成長期にあたる50年以上前に植林された成木は伐採する必要がある。つまり森林資源の活用は、森林を保護することを意味する。だからこそ、「私たちは、半世紀にわたり維持され続けてきたものを、次の半世紀にも維持できるのです」と、大島氏は述べた。

智頭ノ森ノ学ビ舎(智頭の森林ワークショップ)は、小規模林業と林業起業希望者の支援を目的に、2015年に設立されたグループだ。智頭ノ森ノ学ビ舎は日本各地からさまざまな林業の専門家を招き、ワークショップを開催している。

「私たちは林道建設も指導しますが、これは非常に特異なことです。森林・林業の学校は、木の保全や伐採の仕方は教えます。しかし、伐採木の運搬には安全で効率的な道路建設が必要不可欠なのにも関わらず、大抵の場合、林道の建設方法は教えてくれないんです」と、智頭ノ森ノ学ビ舎の会長を務める大谷訓大氏は述べた。大谷氏は祖父が所有していた山林を受け継ぎ、林業を続けている。

智頭町では、スタディツアー参加者は地元料理人が作る、多彩な伝統料理を提供するみたき園にも立ち寄った。料理人の大半は地元の食材を使い慣れた年配の主婦だ。現オーナーの娘がこのガーデンレストランのウェブサイトを最近リニューアルしてから、若年層の食事客が増加したという。

八頭町では農業再生に取り組む、二代目や三代目の農家の人たちもいる。田中里志氏は、家族が運営する田中農場の経営を2年前に引き継いだ。田中氏が米を栽培する水田の99パーセントは、他の農家から借りているものだ。

「当社が土地の追加をお願いしたことはこの20年間一度もありません。ただ、農業就業者の高齢化に伴って耕作管理の依頼を受け止めるうちに耕作面積が増えただけのことです」と、田中氏は語った。さらに、「現在、私たちは255名の方々からお借りした土地で、農薬や肥料の使用量を抑えた米を生産しています」と続けた。

田中氏は、農業で起業を目指す若者が事前に学習し、準備ができるよう、こうした若者を雇う一方で、ドローン(小型無人機)や自動運転田植機の導入、そして冬季に田んぼで栽培する白ネギの輸出など、新たなことに挑戦している。

田中農場で研修を受けた若手農業者の一人が、柿農園の岡崎ファームを営む岡崎昭都氏だ。100年以上の歴史を持つ柿農園を維持するため、岡崎氏は30歳のとき、祖父から家業を継いだ。岡崎氏の多岐にわたる取り組みには、木の剪定(せんてい)や異なる特性を持つ数品種の栽培などがある。

岡崎氏の生産する高品質の柿は、主に小売店や個人消費者に直接販売されている。

「私の次の計画は、この農園を観光客が呼べる見て食べて楽しめる観光園にすること、柿を利用した加工食品を創りだすこと、そして体に障害を持つ人を雇い入れることです」と、岡崎氏は話した。

原文はこちら(英文)
https://www.japantimes.co.jp/satoyama-consortium/2019/12/15/satoyama-consortium/various-potential-opportunities-found-forests-farms/

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