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2021.08.11

越後妻有地域を活性化するアートトリエンナーレ

越後妻有地域を活性化するアートトリエンナーレ

Japan Times Satoyama推進コンソーシアムが主催し、事務局長の吉田雄人氏が進行を務めたトークセッション、第16回Satoyamaカフェが5月8日にオンラインで開催され、2000年から新潟県の越後妻有地域で行われており地域活性化に大貢献しているユニークなアートイベント、「大地の芸術祭」にたずさわる2人の女性に話を聞いた。

この芸術祭には、この地域の景観や文化から着想を得た作品が日本からも世界からも寄せられ、それらは地域内の200のエリアに点々と展示される。

NPO法人越後妻有里山協働機構の理事である玉木有紀子氏は2003年からこのイベントに関わっている。玉木氏によると、十日市市と津南町にまたがるこの広い地域は、地球上でも最も積雪量の多い地域のひとつで、ブナの森や棚田もあるが、過疎高齢化の問題も抱えているという。

「このイベントの目的は、地域の問題を解決し、活性化を進めたいというものでした」と玉木氏。しかし、当初は現代美術よりも病院や道路の方がほしいという住民からも、地元の議員からも、反対意見しか出てこなかったという。「でも前の津南町長の『今まで何をやってもダメだったんだから、これでダメでもいいだろう』という言葉が決め手となって動き出したのです」と玉木氏。

日本史上最年少町長である津南町現町長の桑原悠氏は、この芸術祭により人生が変わった町民の一人だ。高校2年生のときに訪れた大地の芸術祭に非常に感動したという。特にこのイベントに招聘された、女性として初めての国連難民高等弁務官、緒方貞子氏のスピーチに感銘を受け、この経験のおかげでふるさとを誇りに思うようになったという。

地元の住民たちも芸術家たちや運営者、イベントに関わる人々と関わるうちに変わり始めた。このトリエンナーレのユニークなところは、制作やパフォーマンスの過程に住民が参加する作品がある点である。例えば、住民が所有する土地に芸術家たちが作品を設置する作業を手伝ったり、住民が語る昔の話に着想してアーティストが詩を書いたり、住民自身が劇場レストランで女優を演じたりなど。

玉木氏は、イベント開催期間中に集落にある家で出される、近所の主婦らが手作りした雪見御膳は、自分が作ったものを通して外の世界とつながる行動を象徴していると話す。「実際、彼女たちの多くはもともとよその町から来て、それぞれが自分のふるさとの味を持ち寄りつつ地域に馴染んでいった人たちなんですよ」と玉木氏。進行役を務めた吉田氏は、「彼女たちには、境界を超える力があったということですね」と頷き、これこそが開けた地域を作るために必要な力だと述べた。

芸術祭がスタートする以前は、住民は自分たちの町に自信を持てないでいたという。「みんな、『ここには何もない』と思っていました。よそ者は怖いし、生活を荒らされたくない、イベントなんて自分には関係ないし、やっても変わらない。若者が来るわけがない、と思っていたんです」と桑原氏は言う。しかし、芸術祭によって彼らは誇りを取り戻したのだ。よそ者とのコミュニケーションや連携が、町民たちに自分たちがいかに上質な生き方をしているかという気づきをもたらした。

2018年に開催された前回のトリエンナーレには54万人以上が来場した。桑原氏は、このイベントを通じて越後妻有地域のことを知った人も多く、たくさんの人がその後何度も地域を訪れて地元の人々との交流を楽しんだり田んぼ仕事の手伝いをしたりしていると言う。「棚田のオーナーになることで地域を支援してくれる人もいます。たくさんの企業や著名人も芸術祭を支援してくれており、国からは地域づくりの成功例として評価されています」と桑原氏。香港ハウスやオーストラリアハウスなど、各国の芸術家の作品を展示したり、文化交流の拠点となる海外施設もできた。「集落を維持していくための活動に移住者たちも積極的に参加しています。新しいお店もできています。このような目に見える変化が起こっています」と桑原氏は述べた。

玉木氏は、外の人との関わりを通じて地域を活性化する際の秘訣は、誰もが参加しやすい、弱いつながり、開けたつながりを保つことだと語った。

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