お知らせ

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2018.10.10

木工房と森の再生(岡山県西粟倉村)

木工房と森の再生(岡山県西粟倉村)

英字新聞であるThe Japan Timesが、日本から世界に発信していく「Satoyama」。
2018年1月よりThe Japan Timesにて連載を開始しております。(隔週の月曜日掲載)
コラム名は「satoyama consortium in focus」。
記事はThe Japan Times Onlineにもアーカイブされ、全世界に日本の里山での活動を発信しております。

URL:https://www.japantimes.co.jp/consortium/satoyama/

今回は、2018年9月24日付のThe Japan Timesに掲載したようびの大島奈緒子さんのインタビュー記事を紹介いたします。

タイトル:木工房と森の再生

岡山県北東部にある西粟倉村に、高さ8.5メートルもの大きな窓を持つ木の格子状のデザインの建物がある。

大島正幸代表取締役が率いる、木を扱うクリエイティブ集団「ようび」のオフィス兼工房だ。

正幸さんは、家具のデザイナーおよび製作者でもあり、妻の大島奈緒子さんは建築家だ。家具の生産地として有名な岐阜・高山で修行中だった二人が西粟倉を初めて訪れたのは、2008年の冬だった。

その旅の目的は普段製作に使っているブナやサクラなどの木がどのような場所から来ているのか、日本の山を実際に見てみることだった。

しかし、そこで彼らが直面したのは予想外の現実だった。50年にわたり林業に携わってきたある年配の男性は、国産の木への需要は大幅に減ってしまったと嘆いた。

そこで二人が見た森は、数十年前に植えられたであろうスギやヒノキの森だった。すでに伐採年齢を迎えたにも関わらず、外国からのより安価な輸入材木に押され、欲しがる人は誰もいなかった。

適度な伐採と管理がされないままの森は荒れ始めていた。

「日本の森が直面している問題を知らずに、これまで何をしてきたのだろうという気持ちになりました」と奈緒子さんは話した。

その夜、正幸さんは高山から西粟倉に移り住むことを決意し、8ヵ月後、移住を実現させ、妻は後に合流することとなった。「私はまだやることがあったので、それから1年半後に合流しました」と奈緒子さんは語った。

こうして彼らは廃工場を工房にして、長年放置されてきた西粟倉の森のヒノキを使った家具を作り始めた。

その後、建築やリノベーションなど業務の幅を広げ、スタッフの数も10人以上に増えた。30代が中心のスタッフは地元出身者もいれば、日本各地からやってきた人もいる。

ようびでは家具製品を作り、建築プロジェクトもこなしつつ、6年の間、自社工房のリノベーションも同時進行していた。

ところが、2015年に火災が起き、それまでの努力が水泡に帰してしまったのだ。工房そのものだけでなく、保管していた木材や、完成品や作りかけの製品、道具や機械など、すべてが燃えてしまった。

それでも正幸さんは、このときも信念を持って即断した。火災が起きた翌朝、スタッフを集めた正幸さんは、まずは誰もけがをしなくて良かったと話した。「そして彼はこの場所で再スタートする、と言ったんです」と、そこで再建をするという彼の決意について、奈緒子さんは振り返った。

西粟倉の森を変えるという正幸さんの決意は、困難に負けることはなかった。彼の脳裏にあったのは、仕事を通じて知り合った人々と、またこの西粟倉で会おうと交わした約束だった。

新しい工房は地元の大工に加え、全国各地から訪れたのべ600人ものボランティアの助けを得て、今年3月に完成した。建築開始当初に参加したボランティアの多くは、ようびの苦労を見ていられないという思いで集まった人たちだった。

「でもだんだんと、友達のフェイスブックで建築現場の写真を見て面白そうだったからといって、集まってくる人が増えてきたんです」と奈緒子さんは語った。

奈緒子さんにとって、人と人のつながりの力、体験することの喜びを実感する出来事だった。これはまさに、ようびが顧客と関わるときに大切にしてきたことだった。「お客さんが買いたいと思うものを見つける過程で、このショールームに来て人と出会い、風景を見たり天気を感じたり、いろいろなことを経験する中で、自分の物語を作って楽しめるようお手伝いすることを心がけています」と奈緒子さんは話した。

物質的な豊かさに満ちた社会においては、作り手側の物語が込められた物はたくさんある。しかし、商品に愛着を持ってもらうには、顧客側の物語作りを手伝うことが必要だと、ようびは考えている。

すべての訪問者がそのようにでき、西粟倉での時間を価値あるものとするために、工房内のショールーム見学には事前の予約が必要となっている。訪問者はショールームの大きな窓の向こうに、またようびの作品を通して、木々の移ろいを感じることができる。

原文はこちら(英文)
https://www.japantimes.co.jp/satoyama-consortium/2018/09/23/satoyama-consortium/woodworking-meets-forest-revitalization/

※今回ご紹介した地域である岡山県は、本コンソーシアムの協力自治体として参画いただいております。

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