活動レポート

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2018.11.01

【レポート】Japan Times Satoyama推進コンソーシアム 実践者交流会2018(広島県神石高原町)

【レポート】Japan Times Satoyama推進コンソーシアム 実践者交流会2018(広島県神石高原町)

 Japan Times Satoyama推進コンソーシアム(代表:末松弥奈子、株式会社ジャパンタイムズ・代表取締役会長)は、10月20日(土)、21日(日)の2日間にわたり、中国地方知事会、神石高原町と共催で、『Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム実践者交流会2018・中国5県地域おこし協力隊研修会・神石高原町ふるさと回帰塾』を広島県神石郡神石高原町の神石高原ホテルで開催しました。当日は205名の参加者にご参加いただきました。

 多様性に富んだ実践者の方々によるお話や、神石高原町における取り組みなどについて、中国5県地域おこし協力隊の皆さまや全国からご参加いただいた方々と共有した内容をご紹介します。

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 冒頭、末松弥奈子 (コンソーシアム代表兼ジャパンタイムズ会長)、広島県の湯崎英彦知事、神石高原町の入江嘉則町長が開会・主催者あいさつを行った。

 末松代表は、「地域の課題を地域で解決する取り組みは国内のいたるところで行なわれている。これを共有して役に立つのは日本国内だけではない。世界各国でさまざまな課題がある中、日本の各地での取り組みを英語で伝えられれば、世界の誰かの役に立つ。ひいては日本が世界の役に立つことにつながる」と述べ、ローカルの力がグローバルに生かされるために英語で発信することの意義を語った。

 主催団体の一つ、中国地方知事会の会長を務める湯崎知事は、「地域おこし協力隊の方々同士のみならず、実践者の方々とも交流できることは意義深い。広島の中山間地域に来たいという方も増えているので、価値観を共有できる方に来ていただき、地域を盛り上げる人材になってほしい」と、若い世代を中心とした地域振興の広がりに期待を寄せた。

 同じく主催団体の神石高原町の入江町長は、「地方の活性化のための移住や定住の推進はもちろんだが、まずは関係人口を作ることが重要であるように、この会も人や場所との関係を作る場でありたい。新しい関係ができれば行動が変わり、発見があり、そこから可能性が生まれ、新しい取り組みが始まる」と、参加者同士の交流を促した。

 続いて、来賓としてあいさつをした小林史明衆議院議員は、「ルールを変える側にまわりたいという思いで、政治の世界で実践者となってから6年間、これからの政治家は地域の実践者と一緒にプロジェクト型の課題解決を実践すべきとの認識をあらたにしている。何を成すか、誰と生きるかを大切に、人生100年を仲間と生きられるようなつながりを生む会であってほしい」と、自らも実践者としての思いを述べた。

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 基調講演には、『里山資本主義』の著者である藻谷浩介氏が登壇。50年前と最も大きく変わったことの一つとして、平均寿命が延びたことを指摘し、「50年前の平均寿命は60代。現代の都会人の生活では、いまだにここまでの人生設計しかできていない」と述べた。一方で、「地方の人は職業が一人一つではない。一人何役もの役割が死ぬまである。かけがえのない存在として一人一人が楽しく生きられる」と語った。

 「日本の国際競争力を下支えしている工場の数々も都内にはなく、すべて地方にある。日本ブランドを支える農産物が作られているのも里山。木を有効利用すれば、都会よりはるかに効率的に省エネも可能」と藻谷氏。

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 一つ目のコンソーシアムセッションでは、NPO 法人 ETIC. 代表理事の宮城治男氏がモデレーターを務め、『里山里海X起業』というテーマで、3名の起業家が地域資源を生かした事業展開について語り合った。

 真鍋太一氏は株式会社フードハブ・プロジェクトの支配人として、移住先の徳島県神山町で、農業を基盤に、食堂、パン屋、食品店の運営、加工品の開発から食育まで手がけ、地域と一緒に作り、一緒に食べるということを実践している。この事業をきっかけに3名の新規就農者と28人の移住者が生まれたという。

 森山明能氏は、100パーセント民間のまちづくり会社である、株式会社御祓川のシニアコーディネーターを務める。「能登の人事部」という、地域の中小企業の人事部を代行する人材プラットフォームの運営や、「うれし!たのし!島流し!」と銘打った、能登の暮らし体験プログラムなどの支援をはじめ、石川県七尾市の地域づくりを担っている。

 株式会社ミュウの代表取締役・渡部美佳氏は、年間を通して日本各地のいちごと、いちごを使ったお菓子を楽しめるいちごの専門店を京都で開業して15年目。昨年からは岡山県西粟倉村にも出店し、今後は同地で研究所を作り、夏いちごの生産を計画しているという。

 同世代が地域おこしに尽力している神山町に居を移す決断をした真鍋氏は、「40年ぶりに地元のお酒を復活させる、もう作られなくなった小麦の種を復活させるなど、いろいろな挑戦を、地域の方々が気にかけてくれることが励みになる。地域とのつながりを作る一つの方法として、自分たちで作った新聞を、徳島新聞に折り込みで毎月1,680戸に届けている」と、地元との関わり方について語った。

 もともと地元出身で、UJI ターンをサポートする側の森山氏は、「国土のあり方は自治体という枠組みにとらわれるべきではなく、人が住み、文化が続くための取り組みが重要」と述べた。

 渡部氏は、「一つのものを深掘りすることは、同じお店をいくつもフランチャイズするよりも面白い」と、いちごという商品を掘り下げた結果、大きく広がった日本各地の生産者とのつながりや、大学などとの共同研究について紹介した。

 モデレーターの宮城氏は、「地域の中で新しい仕事を生むことの一つの選択肢として起業がある。地元の支えを受けながらそれを実践中の3名の話をぜひ参考にして、それぞれの立場から自分には何ができるかを考察していただければ」と、セッションを締めくくった。

(写真)左から真鍋氏、宮城氏、森山氏、渡部氏。
(写真)左から真鍋氏、宮城氏、森山氏、渡部氏。

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 続いて、地域活動の実践事例として、『ひろしま里山グッドアワード』の受賞取り組み候補5件のプロジェクトのプレゼンテーションが行われた。

 尾道市御調町における干し柿や柿渋などの再興と、柿の天日干しの景観保全(尾道柿園)、三次市甲奴町での耕作放棄地と地域の人材を活かした米作り(小川商店ほか)、広島県一の過疎高齢化率の山県郡安芸太田町でのスポーツサーキット(安芸太田スポーツサーキット)、豊田郡大崎上島町での海藻「アカモク」の食材としての利用推進(大崎上島町食文化海藻塾)、世羅郡世羅町における廃校を改修した宿を拠点とした田舎体験事業(東自治会)について発表があった。

「さとやま未来大賞」と「未来の種賞」の選出方法は、来場者による投票。携帯を使って投票ページから一人2票を投じ、「さとやま未来大賞」には三次市甲奴町での米作り、「未来の種賞」には尾道市御調町における柿文化の再興が選ばれた。

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 さらに地元活動の実践事例として、神石高原町の油木高校での「ナマズ・プロジェクト」について、高校生からの発表があった。高齢化の進む神石高原町には483ヘクタールもの耕作放棄地があり、町内の耕地面積のおよそ28パーセントにものぼる。これを有効利用できないかという発想から2008年に生まれたのがこの「ナマズ・プロジェクト」。栄養価が高く、臭みの少ない白身のナマズは、刺身や蒲焼、天ぷらなど様々な調理法で楽しむことができ、高級魚として取り引きされている。

「耕作放棄地に池を作り、水を張れば、泥水でも生育できるナマズを10アールあたり5,000匹も養殖できる」と、油木高校の高校生らは説明した。5年前からナマズの加工、販売を開始。販路を拡大し、現在では広島東洋カープの本拠地であるマツダスタジアムでも期間限定でナマズ料理を販売している。高校生らは、「これをマツダスタジアムの名物料理として通年販売できるよう、養殖の規模を拡大し安定供給を目指したい」と意気込んだ。

ウナギが絶滅危惧種に指定され価格が高騰する中、ナマズの養殖には大きなチャンスがあると考え、高校生らは次の課題として効率的な産卵、ふ化、稚魚の生産に取り組んでいる。

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二つ目のコンソーシアムセッションでは、一般社団法人 RCF の代表理事である藤沢烈氏をモデレーターに迎え、『里山里海X教育』というテーマで、3名のパネラーが地域振興における教育の役割やあり方について語った。

徳島県勝浦郡上勝町を拠点に、起業家教育を根幹とした地域再生に取り組んでいる一般社団法人ソシオデザイン代表理事の大西正泰氏は、「地域に高校がなくなるとなかなか人口減少に歯止めがかからない。自らで正解を作る力を育み、それを生かして地方で起業という選択肢につなげるには、地域の人が『教育すると都会へ出て行ってしまう』という恐怖を捨て、地域そのものを学校化するしかない」と語った。

株式会社ジブンノオトの代表取締役で、キャリア教育デザイナーの大野圭司氏は、山口県大島郡周防大島町で、100年後を作る教育を目指し、地域をベースに起業家精神を養うキャリア教育プログラムを、子供たちをはじめ、企業や行政に提供している。「家庭はさまざまだが学校は皆等しく授業を受けられる。学校を拠点に、保護者や地元の人々を巻き込んでいけば地域が変わる。『地域で頑張るのはかっこいい、面白い』を体感してもらうと、実際に起業したい若者が増えてきている」と話した。

神石高原町の入江町長は、「誰もが挑戦できる町という環境を整えることが行政の役目だ。油木高校ではナマズ・プロジェクト以外にも、神石高原町との連携のもと、慶應義塾大学 SFC 研究所の支援を得て、『油木高校生がつくる神石高原町ドローンアカデミー』が今秋発足。いくつもの小さな成功事例が目に見えることで、さまざまな世代が仲間に加わり始め、人のつながりができていくことが最重要」と語った。

モデレーターを務めた藤沢氏は、「地域の資源に気付くだけでなく、それをどう生かして使っていくかを考える力をつけるために、地域での教育が重要になることを、実例をもって学ぶことができた」と締めくくった。

(写真)左から藤沢氏、大西氏、大野氏、入江町長。
(写真)左から藤沢氏、大西氏、大野氏、入江町長。

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続いて、『Japan Times Satoyama フォトコンテスト2018』の受賞作品が、プレゼンターの末松代表から発表された。

一般部門には828作品、自治体部門には51作品の応募があり、本コンソーシアムのアドバイザーによる審査とジャパンタイムズ読者による投票を経て、一般部門の最優秀賞には新潟県星峠を撮影した平山秀人氏、自治体部門の最優秀賞には神奈川県葉山町上山口にある棚田を撮影した神奈川県三浦郡葉山町の写真が選ばれた。

Japan Times Satoyamaフォトコンテスト2018特設サイト
URL:https://satoyama-satoumi.net/contest/photo2018/result/

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1日目のプログラムは、本コンソーシアム運営委員会副委員長を務める太田正隆氏(JTB総合研究所主任研究員/慶應義塾大学大学院特任教授)による総括で締めくくられた。

太田副委員長は、「藻谷氏による、根拠のないイメージに流されることへの警鐘に始まり、そういった社会の中でも多様な仕事や働き方を展開する方々のお話、ナマズで新たな食文化を作っている高校生、小さいことの良さとパワーを活かした地域の取り組みや、自ら正解を生み出す教育など、非常に学びの多い1日となった」と述べた。

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2日目は、まず総括講義として、NPO 法人笑顔つなげての代表理事である曽根原久司氏が、『地域を活かした事業展開~広島の田舎は宝の山~」と題し、自らの地方への移住経験と資源とニーズを結びつけた数々の例を紹介した。

1995年に都心から山梨県へ I ターン移住した曽根原氏。「耕作放棄地が国内で2番目に多いのが山梨県。一人で開墾するうちに、自治体からも依頼があり、広過ぎるので、新人研修の場所を探していた都心の企業を巻き込んだ。社員に農業体験をしてもらいながら、自分たちで作った米で酒などの商品化をしたり、間伐材が山のように余っていることに気付けば、建材としてデベロッパーに提案したり」と述べた。

地域資源とそれを必要とする人とをつなぐ役割を果たしている曽根原氏は、山梨に限らず、広島も、そのほか日本中の里山が資源の宝庫だと話し、「これからますます、企業の研修以外にも CSR や顧客サービス、事業開発などさまざまな方向性で里山の資源を有効活用するチャンスが増える」と期待を述べた。

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2日目のプログラムは、2コースが用意されたスタディツアーで締めくくられた。1つ目のコースは、神石高原町の「高原の風」道の駅内で、地元の食材を地元の女性スタッフが調理するビュッフェレストラン、旧小学校を利用した「学校食堂」、地元住民が資金を出し合って100パーセント民間で立ち上げた「神石高原温泉」を視察した。

(撮影場所)神石高原温泉
(撮影場所)神石高原温泉

2つ目のコースは、町内産在来種のこんにゃくを使用した食品を販売する「AIQONSTORE」と呼ばれる移住者が開業した店舗、犬の殺処分ゼロを目指す「ピースワンコ・ジャパン」、さまざまな資源体験ができ、宿泊も可能な神石高原ティアガルテンを訪問した。

(撮影場所)AIQONSTORE
(撮影場所)AIQONSTORE

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