活動レポート

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2018.06.22

【レポート】Japan Times Satoyama推進コンソーシアム シンポジウム2018

【レポート】Japan Times Satoyama推進コンソーシアム シンポジウム2018

 Japan Times Satoyama推進コンソーシアム(代表:末松弥奈子、株式会社ジャパンタイムズ・代表取締役会長)は、5月16日(水)都道府県会館にてSatoyama推進コンソーシアムシンポジウム2018を開催しました。

 今回は本シンポジウムで行われた特色豊かなディスカッションについてご紹介いたします。

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 冒頭、末松弥奈子 (コンソーシアム代表 兼 ジャパンタイムズ会長)は開会・主催者挨拶の中で、次のように語った。

「英字新聞の出版社であるジャパンタイムズがなぜ『Satoyama』に取り組むのか。それは日本のローカルでの実践的な取り組みを世界に発信することに我々の使命がある。」

『Tokyo』だけが日本ではない、日本のローカルに溢れる素晴らしさを発信することの価値を強調した。

末松氏

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 引き続き、後援団体を代表してご挨拶いただいた小林史明氏 (総務大臣政務官 兼 内閣府大臣政務官)は、世界への発信力を持つジャパンタイムズが『Satoyama』の価値を発信することに対し、その期待感を述べた。

「課題先進国である日本。世界規模での社会への悩みの中で、わが国は今後の世界へのアジェンダを提起する立場にある。新たな国の形の定義。そのヒントが『Satoyama』にはある。」

小林氏

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最初のセッションでは、『里山資本主義』の著者、藻谷浩介氏と、『里海資本論』の著者、NHK エンタープライズの井上恭介氏が対談。「なぜ里山資本主義を世に出したのか」その裏話について語った。

井上氏「東日本大震災が起きた年に『過疎』という言葉が生まれた課題先進地域、中国地方は広島に転勤。そこで見たものは地域の資源を生かして生き生きと暮らしている人々の姿だった。」

里山の暮らしに関心を持った井上氏は『デフレの正体』の著者であり、番組製作でタッグを組んだことのある藻谷氏に声をかけたという。

藻谷氏「全国各地をまわり、実践者の方々の話を聞くことで大きな刺激をもらった。ロジカルシンキングとは名ばかりで机上の空論しか語らない学者やブロガーには辟易していたため、里山・里海の実践者について執筆することには価値を感じた。」

その一方で、藻谷氏は次のような懸念を抱えていたという。

藻谷氏「突如現れた人間が里山・里海について語ることに対して、実践者の方々は不愉快に感じるのではないかと考えた。」
しかし、予想とは異なり、里山・里海の懐は広かった。

藻谷氏「現場の実践者の方々は温かかった。競争ではなく、魅力的な自然の中でありのままに生きる。その姿勢に感銘を受けた。」

この里山・里海の価値観、生き方について、井上氏はこのように補足する。

井上氏「里山・里海の生き方というのは、『自然か経済か』という二者択一的な生き方ではなく、『自然も経済も』というサステイナブルな生き方である。これは同時に『里山資本主義』が『マネー資本主義』の対立概念でないことも示している。」

最後に、藻谷氏は世界的関心が高まりつつある『Satoyama』にまつわる大きなムーブメントに関して、このように締めくくった。

藻谷氏「『Satoyama』的な思考とははこれだけをやっていればいいというものではない。できることをできる範囲で実践するこそが重要である。」

藻谷氏、井上氏

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自治体首長によるパネルセッションでは、広島県、三重県、奈良市の各首長がそれぞれの自治体の取り組みに関して、事例を交えながら行政の視点から議論した。

『里山資本主義』が生まれた地域であり、先駆的事例が数多く存在する自治体でもある広島県の湯崎英彦知事は里山・里海の取り組みに行政が関わる上でのジレンマについて語った。

湯崎氏「里山・里海の取り組みは行政が介入しすぎると失敗する。一方、介入しなければ行政の存在意義がなくなってしまう。その上で感じていることは『人づくり』という観点で、例えば里山・里海に関心を持つ人たちにその関わりしろを提示したり、実践者のネットワークを構築したりすることという点で行政が適切に関わることができるということ。」

次に、日本書紀の時代から人と自然が共生を体現する『海女』発祥の地である三重県の鈴木英敬知事はこの事例を踏まえて次のように話した。

鈴木氏「鳥羽・志摩の海女さんは独自のルールを作り、資源の枯渇を防いできた。行政は、漁業のブランド化、海女小屋の観光地化、海女文化の振興といった取り組みを行い、支援している。」

奈良市の仲川げん市長は、観光資源が豊富である一方、滞在時間が短いという地域特性を踏まえ、観光産業におけるリピーター確保に向けた取り組みの重要性を強調した。

仲川氏「地域の価値を多様化、多面化する取り組み、そのカラフルさがポイント。何度も足を運びたくなるような魅力発信こそが大切である。」

また仲川氏は、行政が失敗のリスクを負い、チャンスへの投資の必要性についても述べた。

仲川氏「トライアンドエラーの中で、地域が刺激を受け、クロステーマ、マルチタスクでの課題解決への歩みが不可欠である。」

この論点を踏まえ、鈴木氏は過去の経験を交えながら情報発信の重要性を次のように述べた。

鈴木氏「伊勢志摩サミット開催時に実感したことであるが、価値発信における発信媒体の活用は非常に重要である。仲間を作り、相互理解を促進することは持続可能性を高めることにつながり、その価値を共有していくことが先駆者たる我々に求められている。」

セッションの最後にモデレーターを務めた栗山浩樹氏 (NTT 取締役 兼 新ビジネス推進室長)は次のように締めくくった。

栗山氏「先の鈴木氏の話にもあるが、イベントを活用した理解促進は有効である。東京オリンピックをはじめ、2019−20年の様々なイベントを通し、『Satoyama』の魅力発信を行って欲しい。」

自治体首長セッション

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最後に、女性実践者セッションでは「女性活躍×里山/里海」というテーマでローカルビジネスでの実体験について談義した。

冒頭、モデレーターである松嶋 匡史氏 (瀬戸内ジャムズガーデン 代表取締役 / 本コンソーシアム運営委員会 委員長)は、実践者の視点で女性活躍の価値について語った。

松嶋氏「10年前は地方移住は都落ち扱いで全く受け入れられなかった。特に規模の経済と言われ続けた1次産業への女性参画は非常に大変であった。その中で、活躍されている女性実践者の体験談には非常に興味がある。特に1次産業で多いのは、生産までしか考えず販売に目を向けないというケース。女性参画は6次産業化を含めたビジネス性向上の観点から意義深い。」

石野 智恵氏 (広島県倉橋島ちりめん網元 石野水産)はキャリアウーマンとしての順風満帆な生活を投げ打って家業である水産業界へと飛び込んだ。

石野氏「きっかけはとある問屋との会話。地元では当たり前だった商品が、市場にはなかなか出回らない非常に価値あるものだと耳にした。これはビジネスチャンスになると直感し、地方に求められるコンサルティングについて学んだ。そこから生産者が見えることとクールな商材を武器に売り込みをかけた。」

子供の頃はすぐに家業を手伝わされるため二度と帰りたくないと思っていた故郷だったが、今は違って見えるという。

石野氏「仕事を通して『楽しい』を表現している。その姿を見ることは子供たちの、故郷への誇りを培い、次世代の担い手を育むと確信している。」

次に、坪内 知佳氏 (株式会社GHIBLI 萩大島船団丸 代表取締役)は1次産業から始まった島おこしでの苦労話を語り、会場の笑いを誘った。

坪内氏「当たり前が通じないローカルルールの数々。伝票の数字を綺麗な字で書くところから地方創生が始まると感じた(笑)漁業を軸に、1次産業の横断的連携や3次産業、6次産業の開拓など様々な事業に取り組むことで持続可能性を切り拓いた。」

この話を受け、大島 奈緒子氏 (ようび建築設計室 室長 建築士)は次のように話す。

大島氏「貰い手が喜ぶように、相手に届くようにものを作ることが大切だと感じている。職人が作る家具は人生で1回の買い物になる人も多い。購入後、いかに関わっていくか。この関係づくりは非常に難しかった。宿泊施設を設け、家具購入までに家族会議の時間を取ってもらい、家具にストーリーを作ってもらう。ここがスタートになった。」

「Satoyama」への参画の難しさについて、女性ならではの視点での話題も上がった。

石野氏「1次産業では産休、育休が通用しない。お天道様と働きよる!この感覚がしっくりくる。」
坪内氏「男女の性的役割分担は避けられない。足並みの不揃いさをも許容する寛大さが大切。」

このようなライフスタイルと「Satoyama」の働き方について、モデレーターの松嶋氏は次のような言葉で締めくくった。

松嶋氏「『Satoyama』では、ワークライフバランスの概念を超えた、ライフとワークの融合したイキイキとした生き方に溢れている。新しい社会、新しい地域づくりの最先端といえるだろう。」

女性実践者セッション

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本シンポジウムの最後は太田正隆氏(JTB総合研究所 主任研究員/慶應義塾大学大学院 特任教授/本コンソーシアム運営委員会 副委員長)による総括で締めくくられた。

太田氏「『Satoyama』には稼いで使うというスタイル、都市と地方の対比ではない、宝を宝に見せるといった要点があり、これらを実践する先駆者の発掘と発信を当コンソーシアムの役割として、取り組みの推進に尽力したい」

太田氏

※シンポジウムの内容はThe Japan Times紙の特別号(2018年6月4日付)およびThe Japan Times Onlineにも掲載しております。
https://www.japantimes.co.jp/news/column/satoyama-consortium/

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